ケンタと学ぶ 相馬眼の新理論

2-2.筋肉の質

まずは、歩様から筋肉の質を見分ける方法について説明します。

筋肉は車で言えばエンジンのようなパワーの源で、その質は推進力に大きな影響を与えるとても重要なものです。

筋肉の質は基本的に全身で同じなので、見るときは一番わかりやすい、骨盤と大腿骨の間にある筋肉を見ます。

ここだね。

骨盤と大腿骨の間にある筋肉

歩くとビロンビロンするところだな。

(→1-2.筋肉の質

やわらかさ

やわらかい筋肉は長く伸びて、硬い筋肉は長く伸びません。

筋肉のやわらかさは、接地を長く、地面に加える力を強くする動き、それから加速力と持続力に影響を与えます。(→1-5.接地を長く、地面に加える力を強く1-15.加速力と持続力

筋肉のやわらかさは股関節の角度の変化を見ます。筋肉がやわらかいほど、股関節の角度の変化が大きくなります。

骨盤と大腿骨の間にある筋肉を直接見てもやわらかさはわかります。この筋肉が長く伸びるほどやわらかい筋肉で、伸びないほど硬い筋肉ということです。

走るときは頸を見ろって言ってたけど、歩きだと頸は見ないの?

パドックだと頸は安定しないからな。全然動かさなかったり、厩務員にちょっかい出してたり。だから股関節の角度の方を見る。

なるほど。

ゆるさ

ゆるさがない筋肉は筋線維の密度が高く、強いパワーを発揮することができます。

ゆるさがないほど推進力が強くなるんだったな。

ゆるさがない筋肉は筋線維が詰まっていて、重くて水分が少ないです。
反対に、ゆるい筋肉は筋線維の密度が小さく、軽くて水っぽいです。

ようかんと水ようかんのイメージでしょ。

おっ、その通りだ。ゆるさがない筋肉は水分の少ないしっとりようかんで、ゆるい筋肉は水分を含んだプルプル水ようかんだ。
これは走っているときと見方は変わらないな。

ちなみに筋肉の質の中でも、ゆるさは馬の状態によって変わります。その辺は幼駒・成長編で詳しく扱いますが。

筋肉の質は生まれつきみたいなもので、一部を除いて基本的に変えられない。が、このゆるさは変わる。

パドック解説とか調教師のコメントとかで、まだまだ筋肉がゆるいですって言うだろ。馬の成長や状態で筋肉のゆるさは変わっていくんだ。

じゃあパドックではゆるさの変化も見た方がいいってこと?

とりあえずは歩様が見れればいい。ただゆるさの変化も推進力の変化になるから、見れた方がいいだろうな。詳しいことは幼駒・成長編で説明するが。

バネのやわらかさ

バネのやわらかい筋肉は力を発揮する時間が長く、強いパワーを発揮することができます。

バネがやわらかいほど推進力が強くなるんだったな。

バネのやわらかさは、股関節が伸びきってから曲がるときの、曲げる力が働く区間の長さを見ます。股関節を曲げる筋肉のバネのやわらかさを見るわけです。
レース編ではこの辺りを詳しく説明しませんでしたが、ここではもう少ししっかり説明しようと思います。

バネのやわらかさは弓矢のイメージがわかりやすいです。やわらかい弓と硬い弓、それぞれを引いて矢を放つときを考えます。

やわらかい弓はよくしなり、引ききって手を離した後に、長い区間矢に力を加えることができます。

硬い弓はあまりしならず、引ききって手を離した後に、短い区間でしか矢に力を加えることができません。

やわらかい弓=バネのやわらかい筋肉、硬い弓=バネの硬い筋肉 ってことかな。よくわかんないけど。

この弓矢を馬に落とし込みます。矢が後肢で、弓が股関節を曲げる筋肉、そして引き戻し期の最後の股関節が伸びきったとき(股関節を曲げる筋肉が伸びきったとき)が弓を引ききったとき、そこから手を離した後が振り出し期です。

バネのやわらかい筋肉はやわらかい弓です。振り出し期に長い区間、後肢(矢)に力を加えることができます。

バネの硬い筋肉は硬い弓です。振り出し期に短い区間しか、後肢(矢)に力を加えることができません。

後肢に加わる力が働く区間の長さで、筋肉のバネのやわらかさを見分けるのです。

難しいけど、ちょっと具体的になったかもね。

感覚的にはビヨンビヨンってなっているかだ。バネがやわらかいほどビヨンビヨンになる。

収縮速度

筋肉の収縮速度は筋肉のパワーと推進力には影響しませんが、ピッチとストライドに影響します。

収縮速度が速い馬はキビキビとした動きをし、ピッチが速くなります。反対に収縮速度が遅い馬はゆったりと動き、ストライドが大きくなります。これは走りでも歩様でもそうなります。

あまり気にしなくていい項目だな。収縮速度が遅いからダメとかではなく、ただピッチとストライドが変化するだけだ。それがどうなるってことでもない。

はい。気にしません。

筋線維のタイプ

1-14.距離適性 でやったやつだな。説明もそのままだ。

ここでも説明しておきますね。

筋線維のタイプとは、筋線維が速筋線維か遅筋線維かというものです。速筋線維が多いと短距離が得意になりますし、遅筋線維が多いと長距離が得意になります。

筋線維のタイプは筋肉の「コシ」を見ればわかります。速筋線維が多い筋肉はコシが強くなり、遅筋線維が多い筋肉はコシが弱くなります。

下はコシが強い筋肉とコシが弱い筋肉を比較した絵です。残酷ですが馬の筋肉の一部を切り取って棒で持ち上げたときを考えます。コシが強い筋肉はしっかりしていてあまり曲がらないですが、コシが弱い筋肉はヘニャッとしていてよく曲がります。

イメージとしてはこんな感じですが、コシとは力に対する形の変わりにくさと言ってもいいでしょう。速筋線維が多くコシが強い筋肉は力に対して形が変わりにくく、筋肉本来の形を保とうとします。遅筋線維が多くコシが弱い筋肉は力に対して形が素直に変わりやすいです。

もっとカジュアルに言うと、速筋線維が多くコシが強い筋肉はドロッとしていて、遅筋線維が多くコシが弱い筋肉はサラサラしているイメージです。
走っているとき(歩いているとき)の筋肉をよく見るとコシ、そして筋線維のタイプがわかります。

疲労度合い

これは筋肉の質とはちょっと違いますが、推進力を大きく左右する非常に重要なことです。疲労があるほど筋肉のパワーは弱くなってしまいます。幼駒・成長編で見分け方を含め詳しく説明します。

強い馬が不可解な負け方をする多くの場合は、筋肉の疲労が関係していると考えています。それほどレース結果に影響するので、パドックでは必ず見るようにしましょう。

でもパドック編ではやらないんだ。

筋肉の疲労度合いを含めた馬の状態の変化は、幼駒・成長編でまとめて扱いますので、そこまで少々お待ちください。