ケンタと学ぶ 相馬眼の新理論

1-2.筋肉の質

筋肉は車のエンジンに例えられるパワーの源ですが、そのパワーは筋肉の量、そして筋肉の質で決まります。筋肉の量は適度な運動をしたら筋肉が増えてパワーも増大するみたいなことです。

ただし、筋肉の量だけでは筋肉のパワーに大きな差はつきません。重要になってくるのが筋肉の質です。

1-1でぼんやりとした概念がわかったところで、ここからは具体的なものを見ていく。
まずは筋肉の質だが、正直これがわかるだけでも相馬眼の半分がわかったと言っても過言ではない。

半分はすごいね。1-2で半分か。残りは大したことないってこと?

いやそんなことはないが、

筋肉の質は全身で同じ

馬には全身に様々な筋肉がありますが、各筋肉の量に違いはあっても、筋肉の質は基本的に同じです。前躯と後躯の筋肉で質が違うといったことは基本的にありません。

「基本的に」が気になる。

少し正確性を重視して付け足しましたが、普通に見ていく分には「基本的に」という言葉は無視して大丈夫です。

「基本的に」無視していいってことだね。

まあ無視していい。

さらっと各筋肉の量には違いがあると言ったが、どこの筋肉が多くてどこの筋肉が少ないかというのは走り方はもちろん、馬場適性とか他の適性にも関わってくる。
ここでは全体の筋肉の質の話をするが、筋肉の量の違いで走り方と適性が変わるというのは今後のためにも覚えといた方がいい。

はい。筋肉の量の違いも重要なんだね。

筋肉と関節の動き

やわらかさの説明の前に、筋肉と関節の動きについて説明しておきます。関節が曲がったところからスタートです。

1.関節が曲がっていると曲がった方とは反対側の筋肉が伸びます。

2.筋肉は伸びたときに縮もうとする力を発揮するので、今度は関節が伸びていきます。

3.関節が伸びるとさっきとは反対側の筋肉が伸びます。

4.その筋肉が縮もうとする力を発揮するので、関節が曲がっていきます。

(1に戻る)

と繰り返していきます。
走行中関節はこのように曲がる・伸びるを繰り返して動き、個々の関節の動きが集まって全体の動き、フォームがつくられるのです。

やわらかさ

そしてやわらかさですが、やわらかい筋肉とは「筋肉は伸びたときに縮もうとする力を発揮する」の「伸びたとき」の長さが長い筋肉のことを言います。

やわらかい筋肉では関節が大きく曲がる・大きく伸びることになり、全体の動きも大きくなります。

しかしやわらかい筋肉は、動きの中で筋肉が力を発揮する時間の割合は小さくなります。

筋肉は伸びたときに縮もうとする力を発揮する。硬くて長く伸びない筋肉だと伸びる&縮むの間隔は短くなる。間隔が短くなればそれだけ筋肉が力を発揮できる時間の割合が増えるということだ。

やわらかい筋肉の大きな動きは動きの速さに、硬い筋肉の力を発揮する時間の割合は力の強さに結びつきます。
1-1.推進力について で、[パワー=力の強さ×動きの速さ]は筋肉がやわらかいと動きの速さに傾き、筋肉が硬いと力の強さに傾くという話をしましたが、その理由はここにあるのです。

力を発揮する時間の割合が力の強さに結びつくのは何となくわかるけど、大きな動きが動きの速さに結びつくのはどうして?

速さをグラフにしてみるとわかりやすいかもしれない。

上がやわらかくて動きの大きな筋肉。下が硬くて動きの小さな筋肉。(実際はこんなカクカクなグラフじゃないと思うが。)
動きが反転するときは減速&再加速することになるが、そのとき速さは一度下がってしまう。速さの観点ではこの減速&再加速の時間が少ないやわらかい筋肉の方がいいということになる。

筋肉が力を発揮する減速&再加速の時間は速さが減るんだね。なんかダマされた気分だけど、少し納得できるような。

推進力を最大にさせるにはやわらかすぎず、硬すぎず、ちょうどいい筋肉が理想となる。ただ別にやわらかいとダメ、硬いとダメではない。やわらかいほどいい、硬いほどいいというわけではないということ。前にも言ったが。

筋肉のやわらかさは頸の角度の変化で見分けられます。頸の角度の変化が大きいほどやわらかい筋肉を、小さいほど硬い筋肉を持っていることになります。

頸?なんで?

筋肉がやわらかいと関節が大きく曲がると説明があったが、それは半分当たっていて半分間違っている。
実はやわらかさには筋肉のやわらかさ以外にも骨格のやわらかさというのがある。骨格のやわらかさについては後々説明するから今は質問なしな。

で、動きの大きさっていうのはこの2つのやわらかさで決まるんだが、頸の動きの大きさは純粋に筋肉のやわらかさだけで決まる。だから筋肉のやわらかさを知りたければ頸を見ろってことになる。

理論と相馬眼について

でもやわらかさは頸の角度の変化を見ろ!なんて簡単に言うけど、それって結構難しいような。

人間の目で見るにはある程度訓練が必要になる。相馬眼ってそういう地道な努力だったりするからな。

うん。難しいよね。

そういう相馬眼についてなんだが、ここで扱う内容はどうしてそうなるかという理論の方向と、馬を見て情報を読み取る相馬眼の方向の2つに分かれる。
相馬眼の方向はここで言う、頸の角度の変化で筋肉のやわらかさを見分けるみたいな結構難しそうなことだな。

うん。

で、やはり相馬眼の方向の習得にはそれ相応の時間がかかる。俺のオススメなんだが、もし相馬眼の方向が難しければ一旦放置しておいて、先に理論の方向を頭に入れてしまうといいかもしれない。

理論の方向は積み重ねが大事で順番に理解していってほしいんだが、相馬眼の方向はそうではないから飛ばしたところを後から見るで問題ないからな。
あと理論が頭に入ってれば馬を見る目的が明確になるから、相馬眼の方向の習得も早くなる。

そこまで言うなら、頸の角度の変化?を見るのは後回しにしようかな。

難しかったらそれでいいぞ。

ゆるさ

ゆるさとは筋線維の密度のことです。筋線維がつまっていて密度が高い筋肉をゆるさのない筋肉と言い、反対に筋線維の密度が低い筋肉をゆるい筋肉と言います。

同じ量の筋肉でも、ゆるさがないほど筋線維が多い分、筋肉が強い力を発揮することができます。そしてそれは強い筋肉のパワーにつながり、強い推進力につながります。

やわらかさみたいにちょうどいいのが一番いいっていうタイプではないんだね。

ゆるくなければゆるくないほどいい。

ゆるさの見分け方ですが、ゆるい筋肉はよく水っぽいと言われ、水分を多く含んだ筋肉をしています。

水ようかんみたいな感じだ。

ゆるさのない筋肉ほど含まれる水分は少なくなります。

水じゃないようかんみたいな感じだな。

ようかんばっかり。

これ以上わかりやすい説明もないと思うが。

筋肉のゆるさは水ようかんと水じゃないようかんをイメージしながら、よく見るとだんだんわかってくると思います。初めは難しいかもしれませんが。ようかんのイメージが大切です。

(こいつら…。)

これって[パワー=力の強さ×動きの速さ]の力の強さが増えるってことでいいの?

いや、力の強さも動きの速さも両方上がる。これは一瞬ん?ってなるかもしれないが、よく考えるとわかる。

例えばダンベルを持ち上げるとき、筋肉が発揮する力が弱かったら遅い速度でしか持ち上げられないが、筋肉が発揮する力が強かったら速い速度で持ち上げられるだろ。
まあパワー全体が上がるわけだ。あくまで力の強さか動きの速さかを決めるのはやわらかさだ。

ふーん。

あんまり深く考えなくていいぞ。

バネのやわらかさ

バネは引っ張ったら伸びて、伸びたら縮もうとする性質があります。同じ力で引っ張っても長く伸びるバネとそうではないバネがあります。長く伸びる方をやわらかいバネあまり伸びない方を硬いバネと言います。

筋肉にはこのバネの要素が含まれています。筋肉のやわらかさは同じで、筋肉のバネのやわらかさが違う筋肉を比べてみましょう。

同じ力で引っ張ってもやわらかいバネは長く伸びます。ということは、バネがやわらかい筋肉はバネが硬い筋肉と比べ、バネ以外の要素は短くなっています。

バネ以外の要素とは伸び縮みしない糸のような要素のことで、引っ張っても長さは変わりません。

バネのやわらかさが違う筋肉

今度は筋肉が伸びて縮むときのバネの要素と伸び縮みしない糸の要素の動きを見ていきましょう。

筋肉が伸びるときは、まず伸び縮みしない糸の要素が伸び、糸の要素が伸びきったらバネの要素が伸び始めます。そしてバネの要素が伸びきったところまでいったら、バネの要素が縮み始め、バネの要素が縮みきったら糸の要素が縮み始めます。

この伸びて縮む動きの中で筋肉が力を発揮する時間は、バネの要素が伸び始めたときからバネの要素が縮みきるまでです。

バネがやわらかい筋肉とバネが硬い筋肉それぞれで筋肉が力を発揮する時間を比べると、バネがやわらかい筋肉ほど筋肉が力を発揮する時間が長いことがわかります。

バネのやわらかさで力を発揮する時間が違ってくる

バネがやわらかくて力を発揮する時間が長いと、トータルで発揮する力は大きくなります。そしてそれが強い筋肉のパワーにつながり、強い推進力につながります。

バネがやわらかければやわらかいほどいいってことだね。(実はあんまり聞いてなかったけど。)

そうだな。

これもゆるさと同じで、力の強さと動きの速さ両方上がるでいいの?

そうだな。パワー全体が上がる。あくまで力の強さか動きの速さかを決めるのはやわらかさだ。

バネのやわらかさの見分け方ですが、股関節が伸びきってから曲がるときの、曲げる力が働く区間の長さを見ます。股関節を曲げる筋肉のバネのやわらかさを見るわけです。別に股関節を曲げる筋肉じゃなくてもいいのですが、ここが一番わかりやすいと思います。

スロー再生じゃないとわからないかもな。感覚的にはビヨンビヨンってなっているかだ。バネがやわらかいほどビヨンビヨンになる。

難しいね。

初めはわからないのが普通だから大丈夫だ。

収縮速度

これはそんなに重要じゃないですが、説明を省くわけにはいかないのでちゃんと説明します。

やわらかさ、ゆるさ、バネのやわらかさ、そして量が同じ筋肉でも、伸びて縮むサイクル1周にかかる時間は違うことがあります。その伸びて縮むサイクル1周の時間を決めるのが筋肉の収縮速度です。

収縮速度が速い筋肉では伸びて縮む動きは速くなり、サイクル1周の時間は短くなります。
反対に収縮速度が遅い筋肉では伸びて縮む動きは遅くなり、サイクル1周の時間は長くなります。
速いと速くなって遅いと遅くなる、単純に考えて大丈夫です。

[パワー=力の強さ×動きの速さ]の動きの速さが上がるってこと、ではないんだよね。力の強さか動きの速さかを決めるのはあくまでやわらかさって言ってたし。

そうだな、力の強さか動きの速さかはあくまでやわらかさが決める。まあ、これを言うとややこしくなるからこれは言わないでおこうか。

(何も言ってないのと同じじゃん。)

収縮速度が違っても筋肉のパワーと推進力は変わりません。(収縮速度が速いほどいい、遅いほどいいというわけではありません。)しかしピッチとストライドには影響します。収縮速度が速いほどピッチに傾き、収縮速度が遅いほどストライドに傾きます。

収縮速度が速い馬はキビキビした動きをし、ピッチが速くなる。収縮速度が遅い馬はゆったりと動き、ストライドが大きくなる。

どっちがいいとかではないんだね。

ピッチとストライドなんだが、これは筋肉の収縮速度だけじゃなく筋肉のやわらかさとかも関係してくるから注意が必要だ。筋肉が硬いほどピッチが速く、やわらかいほどストライドが大きくなる。

あとよくストライドの大きさを可動域の大きさと勘違いしている人がいるが、ストライドは歩幅のことで可動域のことではない。ここも注意が必要だな。
筋肉のやわらかさは可動域の大きさを変えて、それがストライドの大きさを変えることになるが、収縮速度は可動域の大きさは変えずにストライドの大きさを変えることになる。

えーっと、筋肉がやわらかいと可動域が大きくなってストライドも大きくなるってことだよね。でも筋肉の収縮速度は遅いと、可動域の大きさは変わらないのにストライドが大きくなるってことか。可動域の大きさは変わらないのにストライドが変わるってちょっと不思議な感覚。

まあそういうもんだからしょうがない。100mのトップ選手だって脚の可動域は一般人と変わらないことが多い。あれは筋肉のパワーが一般人とは段違いだから、ストライドも段違いに大きくなる。これも可動域の大きさは変わらないのにストライドの大きさは変わることの一例だな。

あと筋肉の質は生まれつきみたいなもので、一部を除いて基本的に変えられるものではない。筋肉の質が悪いと言われてもどうしようもない、今更変えられないからな。

ふーん。

疲労度合い

これは筋肉の質とはちょっと違いますが、推進力を大きく左右する非常に重要なことです。4.幼駒・成長編で見分け方を含め詳しく説明します。

4ってだいぶ先だね。

内容的には九合目くらいだな。

おおざっぱに説明すると、筋肉痛じゃないときの方が筋肉痛のときより速く走れるよね、ということです。実際は筋肉痛くらい酷い状態になると出走しないですが、そこまでじゃなくても疲労で筋肉のパワー、そして推進力は弱まってしまいます。

強い馬が不可解な負け方をする場合の多くは、筋肉の疲労が関係していると考えています。それほどレース結果に影響するということです。

分析や予想をするうえで筋肉の疲労度合いはかなり重要です。再登場は少し後になりますが、頭に入れておいてください。

以上が筋肉の質だ。疲れただろ。

うん。

まあ重要度で言ったら、相馬眼の1/3くらいを教えたわけだからな。無理もない。

(半分くらいってのは割と本当だったんだ。)

ここまでちゃんと読んでまあまあ理解できたら、相馬眼の1/3を理解できたと思って自信を持っていいぞ(たぶん)。

おー。

次に進むのもよし、もう少し復習するのもよしだ。