ケンタと学ぶ 相馬眼の新理論

運動のパフォーマンスを左右するパワーについて、他にはない視点から解説します

身体運動の効率とかパフォーマンスの良さに関係する「パワー」について、個人的見解を語ります。

パワーはバイオメカニクスの分野ではとても重要な概念なので、パワーについて解説した本やネット記事はいくらでもころがっています。そんな中でこの記事は、あまり一般的ではない見解を多く載せている、かなりクセのある解説記事になっています。

ただ、個人的には身体運動の効率の答えに近づくためには、なくてはならない重要な見解だと思っています。

それと、少し視点が違うだけで、全く難しい話をするつもりはありません。

これから語ることは何かの裏付けもなければ、誰かの意見を参考にしたわけでもありません。なので、無茶苦茶間違っていることを言っていたり、クセがあるとか言っておきながら無茶苦茶当たり前のことしか言っていなかったりするかもしれません。

また、ぼんやりとした概念が今回の肝なので、正確さはかなり置き去りにして、ざっくりと語ってきます。

(これ単体で独立した記事でもありますが、以前投稿した「2セグメントは変速機」と主張した記事の一文、「変速機としての2セグメントを介した筋肉のパワー発揮特性と運動の目的に合ったパワー発揮の結びつけ」について補足する記事でもあります。)

パワー=力の強さ×動き速さ

運動にはパワーが必要です。そのパワーはざっくりと、
 パワー=力の強さ×動きの速さ
と計算されます。「力の強さ」と「動きの速さ」のかけ算になっているのです。

パワーをイメージしやすいのは自転車です。自転車を進めるためにはペダルを漕がないといけません。そして、ある程度の力をかけながら、ある程度の速さでペダルを漕ぐことで、力の強さ×動きの速さ=パワーが生まれ、自転車が進んでいくのです。

このとき、いくらペダルを速く回してもペダルにかける力がスカスカだと自転車は進まないですし、いくらペダルに力をかけても重すぎてペダルが回らなければ自転車は進みません。

これは体を自転車に例えています。体(自転車)を動かすあらゆる運動にはパワーが必要ってことです。

運動の目的はエネルギーを与えること

身体運動の目的とは、何かにエネルギーを与える(もしくは奪う)こと、と私は解釈しています。ここでは単純化するために、エネルギーを与えることだけ考えます。

ボールを投げる運動であればボールに運動エネルギー(ボールが速く動くと増えるエネルギー)を与えるのが目的、弓を引く運動であれば弓に弾性エネルギー(弓がしなって蓄えられるエネルギー)を与えるのが目的、高くジャンプする運動であれば自分の体に運動エネルギーを与えるのが目的、みたいな感じです。

より大きなエネルギーなほどいいのか、必要分だけでいいのか、素早く与えた方がいいのか、効率の良さ(消費エネルギーの少なさ)が重視されるのか、そういったことは運動の目的によって変わるとして、何かにエネルギーを与えることは共通だと思います。

そして、エネルギーを与えるには、パワーが必要です。何かに力をかけながら何かを動かして何かにパワーを与えることで、何かにエネルギーを与えています。

ちなみにエネルギーとパワーはほとんど同じものです。エネルギーを時間で割っただけのものがパワーですから。パワーのトータルがエネルギーみたいな感じです。エネルギーを与える≒パワーを与える と思ってください。

パワーの源は筋肉

パワーの発生源は基本は筋肉(筋線維)です。筋肉が力を発揮しながら縮むことでパワーは生み出されます。(パワー=力の強さ×動きの速さ)
自転車のペダルを漕ぐ感じです。

そして、筋肉が生み出したパワーを何かに与えることが運動になります。

ここからは、筋肉が生み出すパワーを入力、何かに与えるパワーを出力のイメージでとらえます。

体は変速機

筋肉(筋線維)が生み出す入力のパワーは、体を通して、出力のパワーになります。

体は何をしているのか言いますと、パワーの変速です。体は変速機なのです。もう少しちゃんと言うと、体の役割はパワーの変速+パワーの伝達です。

車で例えると、筋肉はエンジンで、体は変速機(トランスミッション)+その他伝達機構です。そして、タイヤと地面の接触部で出力させています。

見落とされがちですが、タイヤだって変速機と言えば変速機です。タイヤの大きさで力と速さの比は変わりますから。変速機(トランスミッション)と聞くとメカニックなものを想像してしまいますが、タイヤの大きさみたいな変速機変速機してない変速機が体にはいっぱいあると思ってください。

まあ、体の中で注目すべきはやはり変速の機能ですね。伝達の機能はとりあえず無視します。

運動時の主要登場人物と関係性

ここで一旦、運動時の主要な登場人物を整理してみましょう。

 入力のパワー
 入力の力
 入力の速さ
 出力のパワー
 出力の力
 出力の速さ
 変速比(変速機の機能)

関係性もざっくりと整理してみます。

 入力のパワー=入力の力×入力の速さ
 出力のパワー=出力の力×出力の速さ
 入力のパワー=出力のパワー(正確には全くイコールではないが、ここではイコールのイメージでいきます)
 入力の力×入力の速さ=出力の力×出力の速さ
 入力の力×変速比=出力の力
 入力の速さ/変速比=出力の速さ

ここからは太字にした部分について詳しく見ていきます。ここからがクセのある部分であり、ここからが本編です。

入力と出力のパワーは同時に相互に影響する

入力のパワー=出力のパワー について、ちょっと勘違いされる方もいるのですが、
 入力のパワーが決定→出力のパワーが決定
ではないです。

同時に相互に影響している、
 入力のパワーが決定⇔出力のパワーが決定
のイメージが正しいです。

車をジャッキで持ちあげてタイヤを浮かせた、出力のパワーが0になる状態では、いくらアクセルを踏んでも空ふかしの状態になって、エンジンが生む入力のパワーも(ほぼ)0になります。こんな感じで体でも、入力のパワーが決定→出力のパワーが決定 とはなっていません。

だからと言って、出力のパワーが決定→入力のパワーが決定 とも違います。タイヤが地面と接してて普通に走る場合は、エンジンの入力のパワーがなければそもそも車は進まず、いくら強いパワーで進みたいと思っても、入力のパワー以上の出力では走れないですから。

一方的な流れがあるわけではなく、同時に相互に、なのです。

入力のパワーは大雑把

入力のパワーは大雑把です。とにかくデカいパワーが必要な運動なら、とにかくデカいパワーを出せばいいんです。一定の量のパワーがあればよくてそれを効率よく行いたいなら、一定の量のパワーをとにかく少ないエネルギー消費で出せばいいんです。

大雑把とはどういうことかちゃんと説明すると、入力のパワー=入力の力×入力の速さ の入力の力と入力の速さのバランスは、気にしないということです。入力のパワーそのもの、そしてその入力のパワーを生み出すのにどれだけエネルギーを消費したかだけしか見られません。

これは、最終的に見られるのが出力のパワーと消費エネルギーなので、出力のパワーとざっくりとイコールで結ばれている入力のパワーは意味があるけれど、その中身まではどうでもいいということです。

とは言ったものの、実は入力のパワーを生み出す筋線維にも繊細な部分はちゃんとあって、生み出すパワーが最大になる力と速さのバランス、生み出すパワーの大きさに比べた消費エネルギーが一番少なくなる力と速さのバランス、というのが存在します。

運動の目的に合わせてそこらへんにチューニングしてあげると、最大限のパフォーマンスを引き出せます。

出力のパワーは繊細

出力のパワーは繊細です。どういうことかと言うと、出力のパワー=出力の力×出力の速さ の出力の力も出力の速さもめちゃくちゃ繊細に気にすべきということです。

パワーは力の強さ×動きの速さと計算され、力が弱くても動きが速ければいいですし、動きが遅くても力が強ければいいです。ただ、出力のパワー、何かにパワーを与えるときは、基本的にそれは通用しません。力が弱くても動きが速ければいい、動きが遅くても力が強ければいい、という原理では動いていないのです。おそらくここは、結構な人が勘違いしているところだと思います。

そして、速さは力になり、力は速さになります。うまいこと言葉にできてない感はありますが。ピンポン玉と砲丸を投げる動作で詳しく説明します。

ピンポン玉を投げる動作:
腕をしならせて投げる、野球の投球フォームのような動作
軽いものを投げるときなど負荷が小さい状態で、手先の速さを出しやすい
重いものを投げるときなど負荷が大きい状態で、大きな力を出しにくい

砲丸を投げる動作:
腕をたたんだ状態から腕を伸ばして投げる動作
軽いものを投げるときなど負荷が小さい状態で、手先の速さを出しにくい
重いものを投げるときなど負荷が大きい状態で、大きな力を出しやすい

・速さは力になる
ピンポン玉を速く投げるには、手から離れたときのピンポン玉を速くする必要があります。ピンポン玉を速くするには加速度が必要で、加速度は力を加えることで発生します。ピンポン玉は軽いので、すぐに速くなります。速くなったピンポン玉にさらに力を加えるには手先を速く動かさないといけません。手先を”速く”動かすことでピンポン玉に”力”を加えるのです。そのための腕をしならせる動作なのです。
ここで、砲丸投げの動作でピンポン玉を投げることを想像してみます。砲丸投げの動作では、手先が遅いので、速くなったピンポン玉にそれ以上力を加えることができません。速さは力になる、とはそういうことです。

・力は速さになる
砲丸を速く投げるには、手から離れたときの砲丸を速くする必要があります。重い砲丸を速くするには、大きな加速度、つまり大きな力が必要です。小さな力では砲丸を加速することも速くすることもできません。大きな”力”を加えることで砲丸を”速く”するのです。そのための砲丸投げの動作なのです。
もしピンポン玉を投げる動作で砲丸を投げても、加えられる力が小さすぎて全く砲丸を速く投げられないでしょう。投げるというより手から離れて落ちるという感じになるかもしれません。力は速さになる、とはこういうことです。

砲丸投げの動作でピンポン玉を投げても、ピンポン玉を投げる動作で砲丸を投げても、ぐだぐだになってしまいます。この例から、出力のパワーは、力が弱くても動きが速ければいい、動きが遅くても力が強ければいい、という原理では動いていないことがわかります。そして、速さは力になり、力は速さになるという言葉の意味もわかったかと思います。

つまりは、力が弱くても動きが速ければいいとか、動きが遅くても力が強ければいいとか、そういうことではなく、「ちょうど良いバランスでズドン」することで、力も速さも両方高めて出力のパワーが高まるということです。逆にそこからズレてしまうと、力も速さもダメになります。

このどっちも高まるちょうど良いバランスは運動の目的ごとにバラバラです。もっと言うなら、この運動ならこのバランスということではなく、もっと時々刻々と変わっていくもので、出力側の状態の変化はもちろん、入力のパワーと変速+伝達の体のスタンバイの状態によっても変わってきます。出力のパワーは繊細なチューニングが求められるのです。

おそらくこの辺のことは、結構な人が勘違いしていて、そして軽視していることだと思われます。

速度ロック!

ボールを投げるときの「ある時点のボールの速度」は、そのときどんな力がボールに加わっていようと不変です。変わるのは加速度です。

これは当たり前のことなんですが、その当たり前のことを強調するために、速度ロックというカッコいい?言葉を作りました。もしかしたら同じ意味の言葉が制御の分野とかですでにあるかもしれません。

そして、この速度ロックの視点は、出力のパワーのチューニングを行う際にとても大事になることだと思っています。

速度がロックされているから、その時点の出力の速さはそこにチューニングしつつ、その速さで出力の力なりエネルギー効率なりを最大化させる、といったことが良い運動では行われていると考えています。瞬間的に合わせることは難しいので、ある程度速さを予測しながらのチューニングが求めらるでしょう。

また、速度ロックの考えは筋肉が生み出す入力のパワーにも適用できると考えています。筋肉が伸び縮みする速度もロックされているわけです。

だからこそ変速機が重要

入力のパワーと出力のパワーは、同時に相互に影響しあって決まるのでした。そして、入力のパワーと出力のパワーの間に入ってチューニングを行い、両者を最大限に高めあうのが、パワーの変速+パワーの伝達の機能を持つ体です。

 入力のパワー=出力のパワー
 入力の力×入力の速さ=出力の力×出力の速さ
 入力の力×変速比=出力の力
 入力の速さ/変速比=出力の速さ

ここの繊細なチューニングを行っているんです。

ちょうどいいギア比で効率良く車を走らせるか、アホみたいなギア比で効率悪く車を走らせるか、みたいなことですね。アホみたいなギア比というのは、砲丸投げの動作でピンポン玉を投げることや、ピンポン玉を投げる動作で砲丸を投げることです。

入力のパワーと出力のパワー、両者を最大限に高めあうのも、両者を全然ダメにするのも、変速機の機能を持つ体しだいです。

変速機の機能はあくまで身体運動の効率を決定する要素の一部です。しかし、超重要な一部であると考えています。

まとめ

・筋肉が生み出す入力のパワーと何かに与える出力のパワーは、同時に相互に影響して決まる

・入力のパワーは大雑把、だけどちょうどいい力と速さのバランスがある

・出力のパワーは繊細。ちょうど良いバランスからズレると力も速さもダメになる

・入力のパワーと出力のパワー、両者を最大限に高めあうのもダメダメにするのも、変速機である体のチューニングしだい

・チューニング(特に繊細な出力のパワーのチューニング)は、速度ロックの考えに基づいて行うと良い

以上、少しクセのある運動時のパワーについての解説でした。