ケンタと学ぶ 相馬眼の新理論

筋肉増強剤を使用した人や馬は、筋肉を見ただけでわかります。その筋肉の特徴について解説します。

私は「疲労しにくくなる系のドーピングの有無を走りから見分ける方法を確立する」ことを個人的な趣味でやっている人間です。筋肉増強剤を専門で研究している人間ではありません。

専門外ですが、走りを分析するためにそういう人や馬のサンプルを数多く見続けた結果、体つきを見るだけで筋肉増強剤を使用しているかどうかが感覚でわかるようになりました。走り方でもわかりますし、体つきでもわかります。そういう無駄な才能があるみたいです。

ただ、「天才にのみ感覚でわかる」は科学的とは言えません。なので今回、その感覚を言語化してみました。

ちなみに、一般的に言われている筋肉がムキムキになるというような単純な話ではないです。(ナチュラルでもものすごく鍛えている人は筋肉量が多いですし、筋肉増強剤を使用していても管理の仕方によっては筋肉量を抑えることができます。)筋肉量ではなく、筋肉の質、そして筋肉の形に違いがあるのです。

ただまあ、あくまで一つの仮説としてお聞きください。

実践的な見分け方だけ知りたい人は、途中は全部スキップして、僧帽筋上部の断面と大胸筋の断面の絵があるところまでお進みください。

筋肉の中心付近と外側の性質が違う

筋肉増強剤を使用していないナチュラルな筋肉は、中心付近でも外側でも性質はおおよそ同じです。一方で筋肉増強剤を十分な量使用している筋肉は、中心付近と外側とで明確に性質が違ってきます。

もう少し詳しく言うと、筋線維に対して垂直な面で筋肉を切ったときの断面を考えます。筋肉増強剤を十分な量使用している筋肉は、この断面における筋肉の中心付近と外側とで、その性質が明確に違ってくるのです。

・中心付近と外側の張力の違い

筋肉増強剤を使用した筋肉は、外側の筋張力に比べ、中心付近の筋張力が強くなります。中心付近は張力が強く、外側は張力が弱くなるのです。
この張力の偏りは、筋肉に力を入れているときでも入れてないときでも、筋肉が伸びているときでも縮んでいるときでも、基本的にはどんな状態でも表れます。

・中心付近と外側の変形しにくさの違い

筋肉増強剤を使用した筋肉は、外側に比べ、中心付近が変形しにくくなります。中心付近は変形しにくく、外側は変形しやすいのです。(変形しにくさとは応力に対するひずみの小ささのことで、筋肉増強剤を使用した筋肉は、どの方向の縦弾性係数も横弾性係数も中心付近の方が外側に比べて大きくなります。)
この変形しにくさの偏りは、基本的にはどんな状態でも表れます。

・中心付近と外側の重さ(密度)の違い

筋肉増強剤を使用した筋肉は、外側の密度に比べ、中心付近の密度が大きくなります。中心付近は密度が大きく重く、外側は密度が小さく軽いのです。

・筋原線維の密度が違うのではないか

張力の偏り、変形しにくさの偏り、重さ(密度)の偏りは、筋原線維の密度の偏りによって生じると考えています。
筋肉増強剤を使用した筋肉は、外側の筋原線維の密度に比べ、中心付近の筋原線維の密度が大きく、筋原線維の密度が大きいところは、張力が強く、変形しにくく、密度が大きくなるのではないか、ということです。

体つきから筋肉増強剤を使用しているかどうかを見分ける方法

静止している状態の筋肉の「形」を見て、筋肉増強剤を使用しているかどうかを判別する方法について解説します。

静止している状態で筋肉に働く主な力は、重力です。筋肉増強剤を使用した筋肉は重力によって、筋線維に垂直な筋肉の断面が変形します。筋肉増強剤を使用した筋肉では、筋肉の中心付近の変形しにくい部分がいわゆる「芯」の役割をします。そして芯があることにより、筋肉増強剤を使用していない筋肉と比較して、筋肉内部の応力が変化し、その応力の変化がひずみの変化になり、最終的に筋肉の断面の形が変わります。
本当はこの応力とひずみをちゃんと計算しないと研究者として失格ですが、私の知識ではできそうにないので、簡単な脳内シミュレーションと観測した結果から導いた、現時点での結論を書きます。(まあ計算は誰でもできますしね。重要なのは、芯があることで断面の形が変わるという「天才的な?」アプローチです。このアプローチさえ合っていればこの後に書いてある現時点での結論が間違っていてもいいんです。)

まずは、筋肉の断面が円の場合です。筋肉増強剤を使用した筋肉は、画像のように変形します。(あくまでイメージです。)

変形後の断面の特徴をざっくりと説明すると、次のようになります。
・上部分の曲率が小さくなる。
・側面部分の曲率が大きくなる。
・側面部分の上部の曲率が、側面部分の下部の曲率に比べて大きくなる。
・全体が水平方向に長くなる。

円でない場合でも、凹んだところがない凸図形、かつ曲率が0になるところがない図形であれば、筋肉増強剤を使用した筋肉の断面は、元々の断面と比べて次のようになります。
・接線が水平に近くなる上部分の曲率が小さくなる。
・接線が鉛直に近くなる側面部分の曲率が大きくなる。
・接線が鉛直に近くなる側面部分の上部は、接線が鉛直に近くなる側面部分の下部に比べて、曲率の増加量が大きい。
・全体が水平方向に長くなる。

筋線維に垂直な断面が鉛直面に近いほど重力の影響が強くなり、断面の変形が大きくなります。

実際の筋肉ではどうなるか、見ていきましょう。筋肉増強剤の使用を判別するのにわかりやすい筋肉は、僧帽筋上部と大胸筋です。直立している場合、大胸筋と僧帽筋は筋線維に垂直な断面が鉛直面に近くなり、筋肉増強剤の使用による断面の変形が大きくなります。

・僧帽筋上部の断面

直立したときの筋肉増強剤を使用した僧帽筋上部の断面は、接線が水平に近くなる上部分の曲率が小さくなり、側面部分(接線が鉛直に近くなる側面部分の上部)の曲率が大きくなります。また、全体が水平方向に長くなります。
筋肉増強剤を使用していなければ上に尖った三角形に近い形になりますが、筋肉増強剤を使用していると台形に近い形になります。

・大胸筋の断面

直立したときの筋肉増強剤を使用した大胸筋の断面は、接線が鉛直に近くなる側面部分の曲率が大きくなります。そして一番の特徴が、斜め上部分(接線が鉛直に近くなる側面部分の上部)の曲率が大きくなることです。また、全体が水平方向に長くなります。
筋肉増強剤を使用していなければしずく形に近い形になりますが、筋肉増強剤を使用していると円に近い形になります。

(厳密には個体ごとの元々の筋肉の形の違いも考慮しないといけませんが。)

以上が静止状態から判別する方法です。

動きの中で見分けるのであれば、断面に対して重力が働く方向が変化すること、筋肉に働く慣性力などの力も断面を変形させることに注意しないといけません。
ただ静止状態と違い、力の変化とともに筋肉の断面が変化すれば、元々の筋肉がどんな形でも、その変化を解析すると筋肉増強剤を使用しているかどうかがわかります。
ちゃんと検証はしていませんが、ジャンプをさせてみるとわかりやすいかもしれません。筋肉増強剤を使用した筋肉は、ジャンプ中のGの変化に対応して断面の形も変化すると予想されます。

筋肉増強剤を使用している体つきの例

陸上短距離では、1988年オリンピック100mのベン・ジョンソン、女子100m200mの世界記録を出したときのフローレンス・ジョイナー、目新しいところでは、2023年世界陸上100mと2024年オリンピック100mのシャカリ・リチャードソン。(シャカリ・リチャードソンは現在まで検査に引っかかったことはありませんが、体つきと走り方を見るにほぼ黒でしょう。)

格闘技は上半身裸な競技が多いのでわかりやすいです。そして、キックボクシングや総合格闘技ではいろいろな人が検査に引っかかっていますし、いろいろな人が使っていたと公言していますから、サンプルが豊富です。キリがないので1つだけ挙げておきます。ちょっと話題にもなりましたが、2024年朝倉未来とやったときの平本蓮です。あれは99%やってます。それと体つきを見るとこれより前からやっている可能性が高いです。

馬では、ちょっと前(ラシックス禁止など薬物規制強化前)までのアメリカ馬の多く。日本馬はほぼいないんですが、というか競馬が好きでずっと競馬を見てきて、過去の名馬のレース映像とかもかなり見てきて、ある1頭を除いて私の目では検知できませんでした。その1頭が、ディープインパクトです。衝撃ですね。深い衝撃です。

筋肉増強剤の効果について私なりの見解

いち専門外の人間の意見として聞いてください。あまり今回の話とは関係ありませんが、私なりに多くの筋肉増強剤を使用した選手のパフォーマンスを見て思ったことを書きます。

基本的に筋肉増強剤を使用すると、筋力と筋肉の重さが増えます。そして、筋力アップ以外の効果として、筋肉が疲労しにくくなることが挙げられます。

重さが足を引っ張らない競技では、筋力の増加がメインの効果になる場合が多いです。投てき競技やコンタクトスポーツなどがそうですね。一般的な筋肉増強剤の効果のイメージに近いのではないでしょうか。

対して重さの増加が足を引っ張る競技では、筋肉が疲労しにくくなる効果がメインになる場合が多いです。代表的なものは、走る競技です。
速く走るためにはただ筋肉をつければいいなんてことはありません。筋肉が一定量を超えると筋肉の重さが足を引っ張るのです。走る競技では、主に筋肉が疲労しにくくなる効果を狙ってドーピングを行います。筋肉が疲労しにくいため、終盤までパフォーマンスを落とさずに走り切れます。
ただ、女性の場合は筋力の増加にもかなりの効果があると思われます。筋力の増加効果と筋肉が疲労しにくくなる効果、両方の高い効果があり、筋肉増強剤の使用は女性の方がパフォーマンスの改善効果が高いと思われます。それは女子の100m、200m、400mの世界記録が、ドーピングをしていたであろう怪しい時代のものからなかなか更新されないことからも示されている気がします。

あとはトレーニング効率の観点から、大きな負荷をかけず故障のリスクを減らしながら筋肉量を確保する目的や、疲労しにくい効果を利用してトレーニングを多く行う目的で使われるでしょうか。

なぜそうなるのかは不明

筋肉の中心付近と外側の性質が違う話ですが、なぜそうなるのかは不明です。

私の勉強不足もあると思いますが、パッと直感でこれが原因だってわからないところが生理学の難しいところですね。正直全く仮説らしい仮説も思い浮かばないレベルです。もしかしたら違うのかも、なんてことが目の前をよぎります。

あとはやっぱり「筋肉増強剤を使用しているかどうかを目視で見分ける」なんて特殊なアプローチ過ぎて、ちゃんとした研究がなさそうなんですね。

まあしょうがない。原因を探るのは後回しで。

ナチュラル筋肉は美しい

話が戻りますが、ナチュラルな筋肉と薬物筋肉は見た目が違います。やっぱりナチュラルな筋肉はカッコいいし美しいです。筋肉増強剤を使用せずに鍛え上げられたアスリートの体は芸術です。一方で筋肉増強剤を使用した筋肉は、なんかアホっぽいですしキモく感じてしまいます。

ナチュラル筋肉は美しい。薬物筋肉はキモい。本当にこれなんです。

(最後に小話をひとつ。見た目から筋肉増強剤の有無を見分けることをずっとやってるとそれがクセになってしまいまして、別に見分けるぞって気合を入れてないときでも、あっこの人やってるなって思ってしまうようになりました。そうすると、男優がかなりの確率で筋肉増強剤(アナボリックステロイドと思われる)を使用していることに気が付きます。変な意味じゃないんですけど、男優の筋肉が気になってしょうがないんですね。私みたいなナチュラル筋肉至上主義で、薬物筋肉をキモいと感じる人には、男優の筋肉が余計なノイズになって気が散ってしまうんです。まあ、筋肉増強剤の中でもアナボリックステロイドには男性ホルモンを高める効果があるらしいので、それ込みで使っているんでしょうね。大変な職業です。でもやっぱ、ナチュラル筋肉が一番カッコいいし美しいです。そして、ナチュラル状態で股間を管理できる男優が一番カッコいいです。長々と記事を書きましたが、一番言いたかったことはそれです。)